こんにちは。and,aの中田です。Webコンサルタントとして自分の案件を担当されている方に向けて、今日は書きます。

コンサルティング会社に所属して、自分の担当クライアントを持って仕事をしている方。この記事はその方を想定しています。プログラミングの知識は必要ありません。

4か月間、Claude Codeを「二つ目の机」として使ってきた記録を書きます。


自分の案件を、最終的には自分で判断する、ということ

一人で机に向かうコンサルタントの後ろ姿、窓辺の静かなオフィス

オフィスには、同僚がいます。先輩もいます。相談しようと思えば、できます。

けれど、自分が担当しているクライアントについて、業界の背景、社内の人間関係、過去の打ち手の経緯。細部まで把握しているのは、結局のところ自分だけです。

「広告のCVR(コンバージョン率、つまり広告を見た人のうち実際に行動した人の割合のことです)が急に半分になった」「クライアントが来月の予算を半分にすると言ってきた」「改善提案を出したのに、社内で却下されたと連絡が来た」。

これらに対して、何を提案するか、いつ提案するか、どの順番で提案するか。隣の同僚に聞いても、すぐには答えが返ってきません。彼には彼の案件があり、コンテキストが違うからです。

担当案件の最終的な判断は、自分でする。それはコンサルタントの仕事の前提条件です。けれど、判断の根拠を、自分の頭の中だけで確かめ続ける。これが、思った以上に重い。

この仕事を10年以上続けている方ほど、密かに感じていることではないかと思います。


案件で迷う瞬間に、自分が何をしているか

机に開かれたノートと書き込みの跡、傍らに休んでいる万年筆

判断に迷ったとき、私はいくつかのことを順番にやっています。

  • ノートを開いて、現状を箇条書きにする
  • 過去の似た案件を、頭の中で並べる
  • 「クライアントが本当に困っているのは何か」を別の言葉に置き換えてみる
  • 仮の提案を3つ作って、どれが一番「自分らしい」かを比べる

誰かに教わったわけではありません。案件を重ねてきた中で、少しずつ身についた、自分なりの判断の手順です。整理された方法論ではない。ただ、迷ったときには、だいたいこの流れで動いています。

ここに、あるときから不満を感じるようになりました。

手順は決まっているのに、毎回ゼロからやり直している

前回の案件で並べた選択肢。3つの仮提案を比べたときの基準。クライアントの状況を別の言葉に置き換えた試み。これらが、案件ごとに自分の頭の中で再生されては消えていく。残らない。

業務として残すべき書類は書いています。議事録、提案書、月次レポート。けれどこれらは社外向けの成果物です。自分が判断に至るまでに頭の中で何をしているか、文章にしたことは、これまでありませんでした。書く必要がなかった。誰のために書くのか、はっきりしなかったからです。


Claude Codeとは何か ── 自分の脳の議事録を、机の上に書き出す

並んで置かれた二つの机、もう一つのワークスペース

Claude Codeをまだ使ったことのないコンサルタントの方に、できるだけ実感に近い言葉で説明します。

机の上に、いつものノートとPCがあるとします。Claude Codeを使うというのは、そのPCの隣に、もう一つの机を増やすようなものです。

その机の上には、Markdown(マークダウン)というテキスト形式の文書が広がっています。普通のメモと同じ感覚で書けます。

書かれているのは、自分の業務の進め方。判断の根拠。よく使うフレーム。過去の似た案件の整理。少しずつ書き留めた、自分自身の脳内の議事録です。

その机の前に、誰かが座っています。実際にはClaude Codeというプログラムです。机の上の文書を読み、私の指示に従って作業を進めてくれます。

新しい案件で迷ったとき、私はその机に向かって話しかけます。「いま、こういう状況のクライアントについて、過去の似たケースを並べて、3つの提案案を作ってほしい」。すると、机の上に書き出した私の判断フレームを参照しながら、初稿が返ってきます。

書くのは、自然な日本語です。プログラミングは要りません。書き加えるほど、机の上の文書が厚くなる。Claude Codeが私の判断フレームを、より深く反映するようになっていきます。

これが、私がClaude Codeを「二つ目の机」と呼んでいる理由です。


判断のフレームを、書き出してみる

判断のフレームワークが手書きで整理されたノート

その机の上に最初に書き出したのは、業務手順ではありません。判断のフレームでした。

具体的には、こんな内容です。

  • クライアントから「数字が悪化した」と相談を受けたとき、最初に確認する3つの視点
  • 提案を3つ作るときの「攻め・守り・現状維持」という枠組み
  • クライアントの社内事情を聞かないと判断できない領域を、どう聞き出すか
  • 「いまは提案を出すべきではない」と判断する基準
  • 案件の引き継ぎや別部署との連携で、自分が事前に確認する3点

これらは、Webコンサルティングの仕事の中で自分の中に溜まってきたフレームです。誰かに体系的に教わったわけではありません。案件ごとの試行錯誤の積み重ねです。

書き出してみて、気づきました。自分のフレームには、相応の根拠があった、ということです。

書く前は「なんとなくこう判断している」と思っていました。書いてみると、根拠まで言葉になる。「これは過去の3案件で、こういう失敗をしたから、この判断基準を持っている」と。書き終わった文書を眺めて、私は改めて自分の判断のしかたに納得しました。長くこの仕事を続けていても、自分の判断の根拠を自分の文章でこれほど明確に確認したのは、初めての経験でした。


「これでいいのか」を、自分の文章で確認する

机に置かれた印刷資料、傍らに読書用メガネと万年筆

二つ目の机ができてからの、いちばんの変化は業務時間の短縮ではありません。

判断したあとに、「これでいいのか」と確認する場所ができた、ということです。

提案を出したあと。見積もりの相談に答えたあと。クライアントの問い合わせに返信したあと。これでよかったかな、と振り返る瞬間は、案件を担当している人間には何度もあります。

これまで、その振り返りは自分の頭の中だけで行われていました。頭の中で行うので、答えが出ない。出ない答えをいつまでも考え続けるか、忘れたふりをするか。どちらかになりがちでした。

Claude Codeを置いてからは、その振り返りを机の上の文書に対して行うようになりました。「いま自分はこういう判断をした。自分のフレームに照らして、これは妥当か」と問いかけます。

返ってくるのは、私自身がかつて書いた言葉で構成された返答です。Claude Code自体が判断しているわけではありません。私の過去の判断フレームを、もう一度私に提示してくれているだけです。

それでも、これが効きます。判断したあとの「これでいいのか」が、自分の文章として目の前に現れる。判断を、ひとりではなくふたり分の視点で確認できる。ふたりめは、過去の自分です。

コンサルタントが、判断の重さを少しだけ下ろせる場所が、机の上にできた。これが、4か月の運用でいちばん大きな変化でした。


担当案件の解像度を上げるという選択

カメラのレンズが焦点を合わせる瞬間、ぼやけた画像が鮮明になる

会社に所属してこの仕事を続けていると、自分の時間の使い方への問いに直面します。

時間が空けば、その時間で別の業務をこなせます。社内会議に出る。新規提案の準備をする。後輩の相談に乗る。いずれも、コンサルタントとして価値ある時間の使い方です。

Claude Codeを使い始めて変わったのは、その選択肢の中に、もうひとつの方向が見えてきたことです。自分が担当しているクライアントに対して、これまでよりも深い仕事をするという方向です。

具体的には、こんなことです。競合5社で済ませていた調査を20社に広げる。月次の振り返りに半年分のトレンドを毎回重ねる。提案の段階で、3つの仮説を提示するところを5つに増やす。クライアント側で意思決定する人の顔ぶれを、過去のメールや議事録から事前に整理しておく。

こうした「深さ」の方向に、空いた時間を回しています。

追加料金をもらう仕事ではありません。同じ契約の中で、これまで以上に価値の高いアウトプットを出す、という選択です。Claude Codeがあれば誰でも同じ仕事ができる時代が来るとすれば、コンサルタントとしての差別化は最終的には深さの側にしか残らない気がしています。

これは私個人の見立てです。


米国の知識労働者の動向

世界地図上に広がる知識労働者のネットワーク

参考のために、米国の動向をいくつか書き留めておきます。

Mavenというオンライン学習プラットフォームで、非エンジニア向けのClaude Code関連の集中講座が500名以上の受講者を集めています。マーケティング、財務、法務、営業の実務経験者が主な対象で、「エンジニア背景は不要」と明記されています。

カナダの大手通信会社TELUS社が、Claudeを開発・分析・サポートチーム全体に統合した事例を公開しています。エンジニアはVS Code(コードを書くためのソフトウェアのことです)内で直接使い、非技術系のスタッフはあらかじめ用意されたテンプレートからAIソリューションを構築するという体制です。職種の違いに関係なく、それぞれのレイヤーで取り込んでいます。

米国のあるリサーチャーは、毎週末にその週の思考の流れを音声でキャプチャし、Claude Codeに渡して「これは記事化する価値があるか」「どの角度で深掘りするか」を判断させる運用を公開しています。自分の脳の中にあるものを毎週外に書き出して整理する習慣が、Claude Codeとの組み合わせで成立している事例です。

日本のコンサルティング業界では、対応する規模の動きがまだほとんど見えてきません。


ひとりで判断する、ということの、新しい意味

朝のオフィス、机の上の二つの作業空間、窓から差す光

コンサルタントとして自分の案件を担当していると、「ひとりで判断する」という感覚があります。組織の中にいても、この感覚は消えません。

これまで「ひとりで判断する」とは、判断の根拠を自分の頭の中だけで確かめ続けることでした。判断の重さも、フレームの呼び出しも、過去の案件との照合も、すべて頭の中で行う。それが、自分の案件を持つことの前提条件でした。

いま、その前提が、少しだけ揺らいでいます。

判断の重さは、依然として自分にあります。提案の責任も、納品物の責任も、自分のものです。けれど、判断に至るまでの整理。案件の比較。フレームの呼び出し。ここまでは、机の上に書き出した文書と、それを読んでくれる存在が、肩代わりしてくれるようになりました。

これは、チームを組むのとは違います。社外の専門家に相談するのとも違います。自分の脳の延長を、自分の机の上に置く。そういう、新しい形の働き方です。

劇的な変化を期待しているわけでも、誇張するつもりもありません。ただ、書き出せる時期が来ている。その手応えだけ、自分の現場から書き留めておきたいと思いました。

コードは書かなくていい。判断の言葉を持っている方なら、始められます。


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