こんにちは。and,aの中田です。ウェブ解析の仕事を30年近く続けてきました。
この記事を書いたのは、自分自身が月初の10日間に、ずっと同じ問題を抱えてきたからです。そして4か月前から、その問題に対してClaude Codeを使ったアプローチを試してきました。
エンジニアではない方を想定して書きます。プログラミングの知識は必要ありません。
月初10営業日という、あの詰まった感じ

Web担当者であれば、月初の景色はだいたい同じではないでしょうか。
前月の数字を集める。Excelで整形する。PowerPointに転載する。コメントを書く。送付する。クライアントから「あと、この指標も追加で見られますか」と返事がくる。もう一度、数字を取りに行く。
これを、月初5営業日から10営業日のあいだに、複数の案件ぶん並走させる。担当している案件が多いほど、この期間の詰まり方は増していきます。
「分散させればいい」と言われることもあります。けれど現実は、クライアント側には予算検討や定例会議のサイクルがあります。こちらの都合で前後にずらせるものではない。早く出してほしい、というのはクライアントにとって自然な要望です。
この記事は、その月初10営業日を、少しだけ変えるための話を書きます。
その10日間に、何をしているか

少し、手元の作業を分解してみます。
私自身が月初にやってきたことの内訳は、こんなものです。CSVのダウンロード。Excelでの整形。PowerPointでの体裁づくり。競合調査のための画面キャプチャ。ヒートマップ(サイトのどこがよく見られているかを色で表示するツールのことです)の画面キャプチャ。
これらは、手順が決まっている作業です。
手順が決まっているということは、毎回同じことを繰り返しているということです。繰り返しの作業に人間の時間が使われている。この状況が、4か月前から、少しずつ変わり始めています。
意味があるのは、その先にある仕事のほうです。数字を読む。打ち手を考える。クライアントに伝える。本体は、そちら側にあります。
Claude Codeとは何か ── 引き継ぎ書を読んで動いてくれる同僚

ここが、この記事でいちばん説明しにくいところです。
「AIアシスタント」と言うと、ChatGPTに話しかけるイメージで止まってしまう方が多いので、少し回り道をします。
長期休暇や産育休に入る前に、業務の引き継ぎをした経験があると思います。そのときに引き継ぎ書を書きます。月次レポートの業務なら、こんな感じです。
- GA4(Googleのアクセス解析ツールのことです)の管理画面にログイン
- 「探索」→「保存済み」→「月次レポート用」を開く
- 前月の1日〜末日でデータをエクスポート、CSVに
- テンプレートの指定セルに貼り付け
- 前月比・前年同月比が更新されていることを確認
- コメント欄には今月の新キャンペーンに触れること これを書いておけば、引き継いだ人はその通りに動いてくれます。
Claude Codeとは、この引き継ぎ書を読んで作業してくれる、バーチャルな同僚のようなものです。
引き継ぎ書はMarkdown(マークダウン)という、メモ帳と同じ感覚で書けるテキスト形式で書きます。一度書けば、来月も再来月も同じように動いてくれます。書き加えるほど、精度が上がっていきます。
ひとつだけ、大事なことを先に言います。コードを書く必要はありません。プログラミングの知識も、開発環境も、必要ありません。書くのは、後輩へのメールと同じ、自然な日本語の指示文です。
「そんなにうまくいくのか」と思われているはずです。私も最初の数週間はそう思っていました。実際、最初に書いた指示書は、うまく動きませんでした。その理由と対処法を、後の章で書きます。
最初に渡す仕事は、1つに絞る

Claude Codeを試して挫折する方のパターンは、ほぼ決まっています。最初から欲張ることです。
「月次レポート全件を自動化したい」「競合調査も一気にやらせたい」。そう考えると、何から始めればいいかわからなくなります。
最初に渡す仕事は、1つに絞る。これが現実的な入り方です。
おすすめは、1社分の月次レポートのうち、最も定型的な部分です。たとえば、こんなものから始めます。
- 数字の取得と、所定セルへの転記
- 前月比・前年同月比の自動計算
- グラフの自動更新(テンプレートが固定されている場合)
ここまでできれば、月初作業の少なくない部分が「自分でやらなくていい状態」になります。
選ぶ基準は1つです。「自分の8割の精度で十分と思える業務かどうか」。
100%を求めると、確認作業のほうが時間がかかります。「8割で問題ない、最後に自分で見て直す」と割り切れる業務が、最初の移し替え先として向いています。
CLAUDE.md は、引き継ぎ書だと思って書く

Claude Codeに指示書を渡すとき、中心になるのが CLAUDE.md というファイルです。難しく考える必要はありません。Wordの代わりに、テキストで書く引き継ぎ書です。
私が書いている内容の骨子は、こんなものです。
- クライアント名、月次の締め日、レポートの形式
- 使うツールと、データの取り出し方
- ファイルの保存場所と、命名ルール
- 守ってほしいこと(数字の丸め方、フォント、社外秘の扱い)
- 過去にミスがあった点と、そのとき何を直したか
最後の「過去のミスと直し方」が、時間が経つほど効いてきます。引き継ぎ書に「念のため」と書き添えるような注意書きを、ここに溜めていくイメージです。
書き方のコツは1つだけです。きれいな文章にしようとしないこと。
後輩に口頭で話すときの言葉のまま、改行しながら書く。これがいちばん精度が出ます。整えようとすると手が止まる。手が止まると、移し替え自体が進まなくなります。
「同時並行で乗り切る」が、本当の目的

ここまで読んで、「つまり自動化でしょう」と感じた方もいると思います。半分は当たっています。半分は違います。
Claude Codeを使う主な目的は、作業時間を減らすことではありません。月初10営業日に重なる案件を、同時並行で乗り切れるようにすることです。
これまでは、案件Aをやっている間、案件Bは止まっていました。手は1組しかないからです。
Claude Codeに月次レポートの定型部分を渡しておくと、私がクライアント先に出向いている間に、別の案件のレポート初稿が出来上がっています。戻ってきたとき、私がやることは数字を読んでコメントを足すことです。月初の山場で、自分が手を動かさないといけない部分が、ぐっと小さくなります。
米国の独立系コンサルタント、Mohit Tater氏が、自分の業務全体をClaude Codeに段階的に移した記録を公開しています。5つのテキストファイルで案件を管理し、育児と両立しながら月2〜3時間の集中時間で業務を回している、という内容です。
別の事業者、Margot氏は、日次データを毎朝6時10分に自動集計させ、Gmailの下書きに届いたレポートを確認してから送る、という運用をしています。「信頼性は95%程度」と本人が書いています。最後は自分で確認する前提、という点が重要です。
100%を任せるのではなく、95%を任せて最後の5%を自分が見る。この設計が、現実的です。
つまずきやすい3つのポイント

私自身が踏んだ穴を、3つ共有します。
1つ目は、用語の名前ゆれです。
GA4の「セッション」、自社で呼んでいる「訪問」、クライアントが言う「アクセス」。指しているものは同じでも、CLAUDE.mdに書いていないと別物として扱われることがあります。最初に用語の対応表を書いておくだけで、後の混乱が大きく減ります。
2つ目は、ツール側のアクセス権です。
GA4、Search Console(Googleが提供する検索データ確認ツールのことです)、広告管理画面。Claude Codeにデータを取りに行かせるには、それぞれのアクセス権設定が必要です。最初に少し時間がかかりますが、一度整えれば以降はずっと使えます。
3つ目は、完璧主義からの脱出です。
最初の月次レポートは、自分が手で作ったときの仕上がりには届きません。届かなくていい。「ここから先は自分が直す」と決めた線まで来ていれば合格、という基準を先に決めておくことが大事です。線を引かないと、調整を続けたあげく「自分でやったほうが早かった」という結論になります。
月初の景色が、少しだけ変わった

4か月続けてみて、月初の景色が、少しだけ変わりました。
朝、PCを開いたとき、いくつかの案件の初稿がすでに手元にある。私はそれを読んで、コメントを書いて、必要なら追加の指示を出す。CSVをダウンロードしてExcelに貼り付ける時間は、確実に減りました。
私がこの変化を「効率化」という言葉だけで語りたくないのは、もう少し大きな話だと思っているからです。
CSVのダウンロード、Excelの整形、画面のキャプチャ。これらは長年「下積み」「修行」と呼ばれてきた作業です。これらに使ってきた時間が、本当に専門性を高めるために必要だったかどうか、問い直していい時期に来ている、と私は感じています。
月初10営業日は、これからも忙しい期間です。クライアントのサイクルは変わらないからです。でも、その10日間に何に時間を使うかは、自分で選び直せるようになりました。
大丈夫です。コードは書かなくていい。引き継ぎ書を書ける人なら、始められます。
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