こんにちは。
and,aの中田です。
ウェブ解析の仕事を30年近く続けてきました。
最近、「AIに分析をやらせてみた」という話を、いろいろな方から聞くようになりました。
GA4(Googleのアクセス解析ツールのことです)をAIにつなぐ。
プロンプト(AIへの指示文のことです)を工夫して、数字を読ませる。
やってみると、思ったより答えが返ってくる。
「これは業務がラクになるぞ」と思う。
ところが、月末になって気づきます。
そんなにラクになっていない。
この「あれ、思ったほどじゃないな」の正体を、今日は書きます。
私は、ウェブ解析のレポート作りをAIに任せる仕組み「解析ロボ」を作りました。
実体験をもとにした話です。
AIへの分析依頼は誰でもできる
AIに分析をさせること自体は、もう特別なことではありません。
Claude CodeというAIをご存知でしょうか。
弊社ではClaude Codeを導入して、現場でフル活用しています。
いいところは、日本語で指示を出すと、PC上のファイルを読み込んだり、編集したりしてくれることです。
ブラウザ上でチャットの会話をする以上のことができるので、非常に重宝しています。
しかも、コードを書くことに強いAIです。
たとえば、Claude Codeへの依頼は、こうなります。
「GA4のデータを取ってきて、離脱率が高いページを一覧にしてほしい」。
プログラムを作ってほしい、とは頼んでいません。
それでも、データを取るコードはClaude Codeが自分で書いて動かし、その日のうちに一覧を出してくれます。
GA4のデータは、Googleスプレッドシートに取り込めます。
使うのは、Google Apps Script(Googleのサービスを自動で動かす仕組みのこと)。
取り込んだ数字をPythonで処理して、表やグラフにするコードも、AIが書いてくれます。
少し前まで、この作業は手作業が当たり前でした。
GA4の画面を開いて、数字を拾う。
表計算ソフトに貼って、集計して、グラフを作る。
あるいは、それができる人に頼む。
いまは、日本語で一言頼めば済みます。
数字を読む段階も同じ。
CSV(表計算ソフトで開けるデータ形式のことです)で渡すと、AIは自社の数字を見て、文章で答えてくれます。
増えた点、減った点、その理由の仮説。
試した方は、「意外とちゃんと答えが返ってくる」と感じたのではないでしょうか。
AIから良い回答を得るコツはデータの渡し方にあります。
GA4の画面のスクリーンショットより、CSVで渡したほうが、数字の読み間違いは減ります。
詳しくは別の記事に書きました。
始めるときのハードルは、この1〜2年で下がりました。
同じ道具を誰でも使える環境になりました。
だから「AIで分析できるかどうか」では、もう人間同士の差になりません。
問題は、その次です。
ラクにならなかった理由
月次レポートの仕事を分解すると、私の場合は7つの工程に分かれます。

AIにデータを渡して答えをもらえるのは、このうち2番の工程です。
残りの6工程は、人の手が必要。
ラクにならなかった理由は、その6工程にありました。
提案書に組み上げる作業が残る
AIが分析結果を返してくれても、それで終わりではありません。
私が作る提案書は、八十数枚。
分析結果を一枚ずつ、提案書の形に組み上げる作業は、手元に残ります。
毎月の負担になるのは、この部分です。
何を見るかは毎月自分で決める
AIは、聞かれたことには答えてくれます。
何を聞くかは、人が決めます。
今月はどのページの、どの数字を見るのか。
先月と同じ切り口でいいのか、変えるのか。
この切り口を、毎月ゼロから考え直している方は、少なくないと思います。
切り口が決まらなければ、AIに頼む内容も決まりません。
データがツールごとに分かれている
月次レポートに使うデータは、GA4だけではありません。
検索の状況は、Google Search Console(検索結果での表示回数や順位が分かるツールです)。
ヒートマップ(ページのどこが見られたかを色で示す図のことです)は、Microsoft Clarity。
ツールごとに画面が別で、データは自動でつながりません。
毎月、それぞれからデータを取り出して、集め直す作業。
「このCSVファイルって、いつのだっけ?」と迷うのも、この作業の途中です。
同じ形のレポートを毎月手で作る
レポートの形式は、毎月ほとんど同じです。
それでも、数字を貼って、グラフを作って、文章を整える作業は、手入力になりがちです。
クライアントごとにテンプレートがあれば、その管理も手間。
AIが分析の文章を出してくれても、決まった形に流し込む作業は残ります。
作る人と確認する人が同じ
レポートを作るのも、最終チェックをするのも、ひとり。
そういう現場は、少なくないと思います。
AIで作る速さが上がっても、確認する人は増えません。
品質のばらつきは、たとえばこう出ます。
AIで作った月次レポートを提出した3日後に、クライアントから「今月のCVRの計算方法、前月と少し違っていませんか」と指摘された、という話を聞きました。
間違いに気づいたのは、作った本人ではなくクライアント。
おそろしい話です。
この確認を別のAIに分ける話は、あとで書きます。
プロンプトで助かるのは分析まで
プロンプトが助けてくれるのは、「分析」まで。
「レポート制作」という工程全体は、引き受けてくれません。
ラクにならない原因は、AI分析のあとの工程が残っているからです。
AIを育てる方法と仕組みを使う方法
この工程を人手から外す方法は、大きく2つあります。
ひとつは、自分でAIを育てること。
どの数字を、どの順で見て、どんなレポートにするか。
判断が要る所と、AIに任せる所の分け方まで、手順として書き出します。
Claude Codeのようなツールに、自分のやり方を少しずつ教えていきます。
十分に現実的で、以前この場で書いた「月初10営業日のつくり直し」は、この入り方の話でした。
ただ、この方法には前提があります。
手順を書き出して、育て続けるには、手間がかかります。
もうひとつは、できあがった仕組みを使う道です。
私も、最初は自分で育てる方法から始めました。
しかし、すぐに壁を感じました。
AIは自動的に分析してくれるし、言ってみれば24時間働くこともできる。
自分一人でできない業務をいかにやりきるかを考え、自分をもう一人作ることにしました。
それが「解析ロボ」です。
サービスの内容と導入のサポートは、こちらのページにまとめています。
解析ロボは、分析させて終わりにせず、提案書そのものが出てくるところまでを仕組みにしています。
たとえば、こんな作業まで含みます。

CV(コンバージョン)は、申し込みや問い合わせなどの成果のことです。
回遊経路は、サイトの中でお客様がたどったページの順番のことです。
提案書は、決まったテンプレートの通りに、八十数枚が出てきます。
プロンプト集と何が違うのか
「プロンプト集を使えば足りるのでは」と聞かれることがあります。
プロンプトは、AIに分析をさせるための部品。
部品をひとつ手に入れても、八十数枚の提案書は出てきません。
汎用のプロンプトが返すのは、分析の文章1枚分。
弊社が持っているのは、データ取得からレポートの完成まで、工程がひとつながりになった仕組みです。
切り口の決め方、提案書への組み上げ、品質の揃え方、チェックまで入っています。
解析ロボの本体は、GitHubで無料公開しています。
ご自身で動かして、カスタマイズして使っていただいて構いません。
データ解析やプログラミングに慣れている方なら、ここから始められるでしょう。
慣れていない方には、ハードルが高いかもしれません。
一番の壁は、ツールを動かせる状態にするまで。
動かせる状態になれば、ツール自体は難しいものではありません。
別のAIにチェックさせる理由
レポートの生成と、数字や事実のチェックは、別のAIに担当させています。
生成はOpus 5.5、チェックはFable 5.5です(どちらもClaude Codeで使えるAIモデルの名前です)。

AIも人間と同じです。
作った当人が見直しをしても、思い込みでミスを見逃します。
実際にあった話です。
長年使ってきた集計の仕組みを、新しい方式に置き換えたとき。
合計値は一致しました。
念のため、全部のセルを1つずつ突き合わせたところ、5714個のうち4個だけ数字が違っていました。
原因は、小数の丸め方の違い。
差はわずか0.1。
合計だけ見ていたら、気づけませんでした。
八十数枚の提案書で、この種の差を目で拾い続けるのは現実的ではない。
確認は別のAIに分けています。
解析ロボを作った経緯は、こちらの記事にまとめました。
やるかやらないかを決めるのはあなた
工程を仕組みにしても、最後の判断はAIに渡しません。

いま私は、自分の作業の95%以上をClaude Codeに任せています。
判断だけは、手元に残しました。
任せた範囲と、残した範囲の線引き。
それが、この仕組みの中身です。
解析ロボを使う方にも、この線引きは変わりません。
やるかやらないかを決めるのは、あなたです。
AIに渡すのは、データと手順と根拠まで。
こう分けると、出てくるレポートが一般論に戻りません。
担当者の「数字を読む力」も鈍りません。
文章の書き方も、人の判断に寄せています。
AIが書いた文章は、均一で滑らかになりがち。
その癖を落として、書き手の判断が残る形に整える作業まで、仕組みに含めています。
何をどう書くかを決めるのは、人です。
空いた時間で分析の数を増やす
工程を仕組みにすると、時間が空きます。
その時間は、調べる切り口を増やすことに使えます。
靴のECサイト
靴の売れ方は、季節、天候、イベントの影響を大きく受けます。
テーマを決めてから解析していては、突発的な要因に間に合いません。
必要なのは、想定できるセグメント(顧客や流入元などの区分のことです)ごとの解析を、あらかじめすべて行っておくこと。
人がレポートを作る方式では、そこまでの数は無理でした。
解析ロボなら、時間の制約はありません。
エクステリアメーカー
ドアや窓に特化したメーカーの支援。
販売サイトは、「コンシューマー向け」と「工務店向け」に分かれています。
全顧客セグメントを分析すると、意外な結果が出ました。
平日に「コンシューマー向け」を見ているのは、ほとんどが工務店。
画像が多く、説明が平易なので、工務店にも好まれていたのです。
狙った相手に、「工務店向け」のサイトは見られていませんでした。
小型トラックのメーカー
トラックを買う人も、最初に出会うのは検索エンジンや生成AIのチャット。
競合サイトの比較を解析ロボに任せると、人が探すより多くの事例が集まりました。
集まった事例から、ひとつの仮説を立てました。
スタジオで撮ったカタログ写真より、作業現場で人とトラックが泥だらけで働く写真のほうが、問い合わせにつながるのではないか。
この仮説が、問い合わせの増加に貢献しました。
上場企業の倉庫業
サイトで見られていたのは、会社の「強み」を紹介するページ。
主な訪問者は、投資家。
社内では、このページはあまり重視されていませんでした。
競合の上場倉庫会社と比べると、強みのコンテンツはわずか。
調べを進めると、見込み客も、問い合わせの前にこのページを見ていると分かりました。
退屈に見えるページの大事な役割が、解析ロボで、はじめて見えてきました。
結果を見て、どう動くかを決めるのは人です。
AIが見つけてくれるのは、想定と現実のずれまでです。
最初の一周はむしろ手間が増える
導入した最初の月は、ラクになりません。
最初に必要なのは、いまのレポートを工程に分解する作業。
どこで担当者の判断が要るのかも、言葉にします。
弊社の導入サポートは、次の流れで進めます。

二周目は、一周目より格段に早く作れます。
三周目には、使う方のほうが私より上手に使いこなしています。
「毎月のレポートを、代行してもらえるのか」と聞かれることがあります。
代行ではなく、貴社の中でレポートが出てくる状態を作って、お渡しします。
目標は、担当者の方が自分で手順を足していける状態。
毎月の手間が必ず減る、とは言いません。
仕組みにできる工程がどれだけあるかで、結果は変わる。
その見極めも、最初に一緒に行います。
毎月のレポート作りに手が回らないなら
AIで分析を始めてみたけれど、思ったほど月末がラクにならない。
そう感じているなら、原因は、分析のあとの工程にあるかもしれません。
工程の中身は、会社ごとに違います。
まずは、貴社で毎月手が回っていない作業の中身を聞かせてください。
仕組みにできるものかどうか、一緒に見るところから始められます。
生成AIの活用やWeb解析についてお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。初回無料です。